思考の可視化でプロジェクトを活性させ、創造を生み出すファシリテーション

vol.79

ビジュアルで躍動する新規事業創出

Text by Tomoko Sato
Photograph by Naoya Takahashi

企業のあらゆるコミュニケーション課題に向き合い、その解決方法を探る、アマナ主催のイベントが2022年5月25日に開催されました。8つのテーマを切り口に、先進企業の方々をゲストに迎えたトークセッションや講演、マーケットの今と未来をとらえたセミナーを実施。テーマ「ビジュアルで躍動する新規事業創出」の回を紹介します。


認識の「ギャップ」を埋め、新規事業のプロジェクトを円滑・迅速に推進し、飛躍させるビジュアルの効果。ビジュアルファシリテーションを活用したコラボレーションのメリットが事例とともに紹介されました。『Co-Visualization Service』を提供するアマナの堀口高士、丸岡和世、コンスタンス・リカが登壇、同じくアマナの杉山諒がファシリテーターをつとめました。

プロジェクトで生じる認識の「ギャップ」

杉山諒(以下、杉山):ビジュアルで躍動する新規事業創出ということで、ビジュアルファシリテーションのプロであるアマナの3人にご登壇いただきます。今日はMiroというオンラインコラボレーションツールを活用しながらプレゼンテ―ションを進行したいと思います。Miroのアカウントをお持ちであれば、実際に入って試してみてください。

新規事業は1人で思い描けても複数人での議論が進まない。僕らはそれを「認識のギャップ」と捉えています。今日はその解決策をクリエイターの皆さんが示してくれます。

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株式会社アマナの杉山諒。

堀口高士(以下、堀口):共創には多業種との連携が必要ですが、他者の視点を理解するのは難しいと感じます。そんな認識の「ギャップ」を埋めながら、さらに視覚効果でワクワクする体験をプロジェクトメンバーと共有できるのが、ビジュアルファシリテーションです。このオンラインホワイトボードMiroは、我々のチームで共有しているものですが、コロナ禍でなかなかチームのコミュニケーションが取れなかった時に活用し、ここでディスカッションすることで向かっていく方向の認識を共有できました。今日はこれを活用してビジュアルコラボレーションを深掘りしていこうと思います。

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オンラインホワイトボードMiro上にEVOKE VILLAGEを設立。トークの内容をMiroを見ながら紹介していきます。

杉山:Miroに入られた方は、付箋にご質問などを書き込んでいただければ、私たちが拾っていきます。そんな形で皆さんとビジュアルコラボレーションをしたいと思います。

堀口:まず、認識の「ギャップ」にはどんなものがあるのか、我々が捉えている課題をお話しします。例えば、言葉が専門的すぎて参加者が理解しづらい、部署ごとに思い描いていることが違う。異動による引継ぎ、それこそ上司と部下でも立場が違えば見ている景色も違います。企業と社員の一体感でいうと、会社の文化が社員に浸透していないので新規事業を理解してもらえない。逆に新しいアイデアが経営層に理解してもらえないという課題も聞いています。

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株式会社アマナの堀口高士。

杉山:いろいろな形で認識の「ギャップ」があるということですね。

丸岡和世(以下、丸岡):私たちのチームでも「ギャップ」はあります。どれがいちばん多いと思いますか?

コンスタンス・リカ(以下、コンスタンス):他の業種との共創です。知識も違うし、専門的な用語を勉強して、一般の人に伝えるときにもう一回解釈しなければいけないことがあります。

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(左から)株式会社アマナの丸岡和世、コンスタンス・リカ。

堀口:Miroにご参加いただいている方は、悩んでいるところに動物の足跡をドラッグ&ドロップしていただければ嬉しいです。(Miroの足跡を見て)やはり多業種との共創が多い印象ですね。

杉山:新規事業創出でクライアントさんを支援させていただいているので、事例を踏まえてその方法を説明できればと思います。

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Step1:ビジュアルファシリテーション「アイデアを可視化する」

堀口:私たちが提供する『Co-Visualization Service』には、3つのステップがあります。まずはみんなの認識を合わせることが重要です。

第1ステップは、「ビジュアルファシリテーション」です。目的を決めるための議論をビジュアルを活用してサポートすることで、認識の「ギャップ」を埋めていきます。弊社で自主開催させていただいたオンラインワークショップでは、その場でアイデアとして出た言葉に対してイラストをつけていくなどして、みんなの見ている景色を合わせていくプロセスを体験してもらいました。

杉山:楽しそうですね。どんな効果がありましたか。

堀口:グラレコとして単純にアイデアを可視化するのではなく、起爆剤となる気づきを提示してアイデアに昇華させています。

丸岡:例えば環境問題の話をするとき、それぞれが思っている環境問題が違う場合がありますが、絵を見ながら話すことで、コモングラウンドを作ることに役立ちます。

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Step2:コンセプトビジュアライゼーション「アイデアを世の中とつなぐ」

丸岡:次は「コンセプトビジュアライゼーション」で、アイデアからコンセプトに飛躍させるステップです。みんなの意見や認識を揃えた段階で、たくさん出たアイデアの中からひとつ中心を見つけて、それをコンセプトにして人に届ける状態にします。興味や気づきを起こすコンセプトがあると、新規事業の実行に進んでいきやすくなります。

コンスタンス:事例はパナソニックのミスト噴霧器の案件です。このプロジェクトの要件は、今まで夏場に冷却設備として使われている機械を空間演出のマーケットにアプローチすることでした。この機械の特長を新しいネーミングやキービジュアルに反映するために、多くのメンバーを巻き込んでアナログとオンラインのハイブリッドなワークショップを開催しました。皆さんのキーワードを抽出しながら、そのイメージを体現したコンセプトが、「自由に姿を変化できる霧と空間の絶景を感じる」MORPHIC(モルフィック)です。

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丸岡:「モルフィック」は、それまではなかった言葉ですよね。

コンスタンス:そうです。「MORPH」は変形で、絶景を意味する「SCENIC」との複合です。

杉山:ところで、アイデアとコンセプトは何が違うのかを改めて聞いてもいいですか。

丸岡:コンセプトは 自分達から生まれたアイデアと世の中をつなげるものとして指針や架け橋になるものだと思います。

堀口:それにはビジュアルが鍵になると思っています。言葉は概念を表すのに適したツールだと思いますが、そこにビジュアルが加わることでよりフォーカスできる気がして、これを「ビジュアライゼーション」とネーミングしています。

Step3:ビジュアルプロトタイピング「アジャイルを活性化する」

コンスタンス:最後のステップが「ビジュアルプロトタイピング」です。アイデアやコンセプトを実際に発信する検証用のビジュアルを作ります。例えば、コンセプトグラフィック、ムービープロトタイプ、アプリやサービスUI/UX のモックなどがアウトプットです。いちばん重要なのは、誰に見せたいのかと何を伝えたいのか、逆に何を引き出したいのかによってビジュアルの形が決まることです。

丸岡:アマナのユースケースを説明します。未来のモビリティのアイデアをリアルな形で検証するプロジェクトです。京都の町で10年後のモビリティがどう活躍するかをテーマに、 SF プロトタイピングというおもしろいアプローチをしました。観光業や人口、街の様子が、将来こう変わるという SF 的なインプットを得た上で出したいろいろなアイデアの中から、身近なところでゴミがどうモビリティと関わるか、動くゴミ箱はこうなるだろうというアイデアの種をまとめ、ゴミが街を動かすというコンセプトイラストができ上がりました。ここまでは、先ほど説明したビジュアルファシリテーションにあたります。

次にビジュアルプロトタイピングのフェーズでは実際の京都の路地を撮影して CG のモックを作りました。街の景観を壊さないサイズが理解できて、細かく走り回って中継点が必要など、実際に運用するにはどういう課題が起こるかまで想像できる絵になりました。

参考記事:モビリティとSFで社会課題を解決。SDGs「住み続けられるまちづくり」へのアプローチをディスカッション

杉山:100の議論より1つのプロトタイプですね。新規事業での例はありますか。

丸岡:これもSFプロトタイピングを活用して、ブリヂストンさんと一緒にソフトロボティクス事業の将来を考えた事例があります。ロボットアームは実際にある製品ですが、その先にどういう産業で、どういう方法で、人類に対してどういう影響を与えるかというビジョンを SF の手法を使って一緒に考えていくことになりました。SF 小説をもとに、ロボットがいると人間とどんな関係が生まれるのか発想を膨らませていきました。

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杉山:手を動かしてみたら活性化するイメージですよね。

堀口:クリエイターがジョインすることで、早く可視化に持っていくことができます。

杉山:視聴者からのご質問ですが、プロジェクトの実現までにかかる時間の目安はありますか。

堀口:どの位置を実現と設定するのかにもよりますが、共通認識をつくって何か世の中に出してみるまで3カ月 ぐらいですかね。

丸岡:逆にビジュアルがあることでプロジェクトに一区切りをつけることができると思います。1個のマイルストーンとして、例えば2カ月に1回ここまで出すと決めると進んでいる感じがします。アジャイルに近いですね。

コンスタンス:アジャイルに絵を使ってどんどん出していくのは効率がいいですね。

堀口 :完成させるというよりも推進させるイメージです。

杉山:最後に、僕が聞いてみたいことですが、ビジュアルによるアプローチで推進する一方で、言葉で解像度を高めることも大切だと思います。ビジュアルとテキストは、右脳と左脳を行き来してお互いを補完していると感じていますが、皆さんはどのように捉えていますか。

堀口:言葉にしなければ伝わらないことはもちろんあります。ただその時にうまく言葉を作るのは難しいので、左脳で考えるのではなく、ビジュアル思考をした言葉の作り方をしています。

コンスタンス:私はネイティブランゲージが英語ですが、うまく翻訳できない言葉がたくさんあります。例えば、木漏れ日という言葉は、英語にすると説明的になるけれど、ビジュアルでみんなが気持ちを合わせることができます。逆も然りで、ビジュアルに言葉を添えるとみんなの気持ちを近づけることができると思います。

丸岡:私たちも、ビジュアルと言葉の両軸で学んでいく姿勢を持ち続けています。

杉山:認識の「ギャップ」を埋め、ビジュアルを活用し事業推進をうながしていく『Co-Visualization Service』。あらゆるプロジェクトで活用したいですね。本日はありがとうございました。

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